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それから赤ん坊が連れてこられたのはある田舎の山の中。
そこに立てられた貧相な小屋らしき家だった。
「ただいま~って、誰もいないんだけどなぁ。」
「ふふ、ここに来るのも久しぶりね。ひとまず、この子がある程度大きくなるまでは、ここに住まなきゃなんだから綺麗にしとかないとねっ。
陸徒~、アナタはその間、麓の村に行ってこの子が飲める牛乳でも買ってきてよ?
私、まだ母乳でないんだからね。」
空花がそう言うと陸徒は「はいはい、分かりましたよ~」と言いながら、お金が入った袋を片手に家から出て行った。
「ふふっ、あの人、あんな態度だけど本当はアナタと出逢えて喜んでるんだから。
少し狭いし汚い家だけど我慢してね?
あっ、そうそう。アナタの名前は陸徒が帰って来てから決めましょ。
ふふふっ、何だかこれからの生活が楽しみだわ。」
女は心底嬉しそうに赤ん坊に話し掛けた後、「よしっ」っと気合いを入れて家の掃除をしだした。
それから数刻、片手に牛乳が入った革製の袋を持った男が帰ってきた。
その頃には最初汚かった家も、女の手によって埃1つない程に綺麗に清掃されていた。
「それじゃ、陸徒、そこに座って。
この子の名前を考えましょう?
それにこの子に私達の事も教えとかないとだしね。」
男は「まだ話も理解できないだろうに…」とか言いながらも、素直に席に座った。
女はそんな様子を嬉しそうに見た後、それから赤ん坊の顔を覗き込み優しい口調で話を始めた。
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