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「私の姓は魯(ロ)、名は粛(シュク)、心名(ココロナ)は空花(コンファ)。
心名って言うのは、自分の認めた相手や、心を許した相手にだけ呼ぶ事を許される特別な名前の事よ。
心名を勝手に呼んじゃうと、打ち首にされても文句が言えないから、ちゃんと覚えとくのよ?
そして、こっちは私の旦那…これからアナタのお父さんになる―――」
空花は陸徒の方を向くと、目配せする。
意図を理解したのか、陸徒も頭を掻きながら赤ん坊を覗き込むと、ぶっきらぼうに話し掛けた。
「俺はぁ、姓は周(シュウ)、名は倉(ソウ)、そして心名が陸徒(リクト)だ。
俺達2人は各地をずっと一緒に旅してきた。正式に籍を入れてるわけじゃないが、一応夫婦ってやつだ。そしてお前がこれから俺達の息子になるってわけ。
まぁよろしく頼むわぁ。」
陸徒が話し終わると、空花は嬉しそうな笑顔を浮かべて赤ん坊を両手で持ち上げた。
「さて、次はアナタの名前ねぇ~って、あら?」
赤ん坊を持ち上げた時に、ヒラリと落ちる一枚の紙切れ。
陸徒はすぐさまそれを拾うと書かれてある文字を読んだ。
「――― 神威(カムイ)…?」
そこには達筆な文字でそう書かれていた。振り仮名付きで。
「…かむい?名前かしら?」
その紙に書かれた文字に頭を捻る2人。
「あーうーっ。
(多分、あの転生させてくれた老人が考えてくれた名前かな?あの人ってもしかしなくても神だろうし…。ここは有り難く貰っておこう。)
あうあうあーっ。」
ここぞとばかりに声を上げる赤ん坊。
「あっ、この子、かむい に反応した?もしかして自分の名前ってわかってるのかな?」
「そうなんじゃね?まぁ名前はこれでいいとして、心名は俺達で考えてあげるか?」
陸徒の発言に「さんせ~っ」と声を上げて嬉しそうにする空花。
これから数刻の間、2人は赤ん坊の心名をあれこれと考え続け、そして最終的に2人が決断した心名が―――
龍(リュウ)であった。
「何か在来(アリキ)たりだし、安易過ぎね?」
「いいのよ、分かりやすくて。それに、龍って強そうじゃない。」
「…さいですか。」
「ふふっ、よろしくね龍ちゃん。」
と、いうことである。
そしてこれから3人での生活が始まるのであった。
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