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あーあー、3ヶ月も掛かって200万ぽっちか…。俺の通帳の数字は全然増えてない。
なんだかなー、結構手間掛けたのに大した金額は入って来なかった。がっかりだ。
あのお婆さんに布団売りつけるのにどれだけ努力したと思ってるんだ…。あんなに面倒な事したのにこれで終わりか~。
もう何人かは食いつくと思ったんだけどな~。
やっぱりやり方が古典的なのかな~。
この街はいつの間にこんなんになったんだか、とりあえず人間の繋がりが薄い。ま、この仕事してる分には有り難い限りだけどな。
世間じゃ悪徳業者だとか詐欺師だとか言われているが、自分にとっては生活の為の大切な仕事なのだから人にとやかく言われる謂われは無い。
だって俺は騙してなんかいないからな。ちゃんと布団を売っている。もしくは壺だったり売れる株の情報だったりだ。
決して金を貸して法外な金額を請求している訳ではない。物を売って対価を頂いているだけだ。…ということで、俺は詐欺師では無い。
先週まで何も入っていなかった筈のビルの隙間に、なぜか小さな花屋が入っているのが目についた。
…なぜわざわざこんな所に…。
完全なるビジネス街。こんな所で花なんて売ったって誰も買わないだろ。
こんな…ヒートアイランドスポットに。
可哀想に猛暑を浴びて店頭に並んでいる花は、健気に頑張って咲き誇っている。
…そのうち枯れるんじゃないの?
「いらっしゃいませー」
店頭でうろうろしてたせいで店員の人が出てきてしまった。
髪の長い女性で、まだ20代前半の若い感じ。微妙な幼さが顔に残っている。水色のエプロンに、安そうな黄色いサンダルを突っ掛け嬉しそうに笑っている。
なんとなく店からは彼女以外の人の気配を感じないけど店主にしては若いな。
ただ大変まずいのは俺が店員とかに弱い人間だということだ。大概最後には押し負けて買わされてしまう。
…花なんていらないんだけどなぁ。
「プレゼントですか?」
いえ、金欠です。儲けと共に出費の支払いが決定している為ほぼ金なんて有りません。
ついでにプレゼントする人も居ないんですけど、どうすれば良いんでしょうか?
「えっと…、お花は好きですか?」
流石に哀れみを持って見ていたとは言えないし。結局頷いておくことしか出来ない。花ねぇ…嫌いじゃないけどさ…。
「私も好きなんですよ、お花」
いやぁそんな晴れ晴れとした笑顔を見せられましてもねぇ。
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