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「さて・・・」
どうしたものか、とカノンが辺りを見回していると、視界に一人の少女の姿が入ってきた。背丈は自分より大分低い。おおよそ8~9歳ほどにも見える。
「ガキ・・・?いや、それにしては・・・」
見た目では判断できない、とカノンは瞬時に感じた。その理由は、彼女から感じる《魔力》の大きさにあった。
「・・・あなた、どこからきたの・・・?」
今にも消え入りそうな声で、少女が尋ねてきた。幸いにも回りにその声を遮る騒音はなく、カノンの耳にも届いた。
「・・アナザーとかいう奴に連れてこられた。」
「ほんと・・・?」
「なんだ?やっぱ信じられねえか」
「答えて・・・」
「・・・本当だ」
めんどくさい、カノンは心からそう思っていた。異空間を渡る魔法なんて、にわかには信じがたいものがある。ほとんどの人間は異世界なんてそう信じないし、実際にあるとは微塵にも思ってはいない。事実、カノンもあの魔法がなければ、一生異世界の存在を否定していただろう。
こいつもその類いだろう、と思っていたカノンだったが、その思いは誤っていたことが、すぐに分かる。
小さいながらも、その少女は確かにガッツポーズをしていたのだから。
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