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「毎日来てたけど、お前帰り遅いし、後5分待って帰らなかったら帰ろうと思ってた」
タバコで時間を潰していたのだろう、左手の携帯用灰皿は最後の一本を飲み込むといっぱいになっていた。
「ごめん、仕事忙しくて………。中入っ……」
「俺結婚するわ。だから終わりにしよう」
私の言葉を遮って、稔は事もなげに呟いた。
一瞬で辺りが真っ白になった。
やけに心臓の音だけがリアルに響いて。
「今、なんて……?」
そろそろ付き合いだして5年、今の仕事が落ち着いたら、営業から離れて定時であがれる部署に異動願いを出して、花嫁修行でもしようと思っていたのに……。
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