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サルディバルの北方、田舎町ランメルト。
この街に、戦争の影は薄い。
農業と手工業が主産業であるランメルトは、戦争とはほぼ無縁だった。
農家の一人娘、今年で十七になるジゼルは、畑に花の種を蒔きながら、ふと、空を見上げた。
ペンキを流したような蒼穹に、戦闘機の影が幾つか飛ぶ。
「……戦争かー」
ジゼルにはまるで実感がない。
「ジゼルー」
手を振りながら駆け寄ってきたのは、近所に暮らすジゼルの幼馴染み、ユンディル。
同じく農家の次男坊だ。
「ユンディル、今、空に」
「うん、僕も見た」
同い年の二人は、どちらからとなく空を見上げる。
戦闘機の影は消えていた。
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