鳥たちの神話

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「ねぇ、ユンディルはどう思ってる?」 「何が?」 「戦争ー……」 種を蒔き終えて空になった器をひっくり返し、ジゼルはユンディルを見る。 「実感ないなぁ、戦争やってるなんて」 初春の風に、三つ編みにしたジゼルの茶髪が揺れる。 ユンディルはハンチング帽を被り直した。 「本当、実感ないよね。ランメルトは平和だ」 「でも、都の方では、男の子はみんな戦争に召集されてるって話でしょ?」 「らしいね」 ランメルトの人間にとって、情報源はラジオと新聞だけ。 そこから得られる情報は、やはり限られてくる。 「お姉ちゃーん」 幼い少女の声に、ジゼルは振り向いた。 畑の間の細い道を、ジゼルに似た茶髪の少女が駆けてくる。 「ヘレナ」 「お姉ちゃん、お母さんが、お使い行ってきてって」 ジゼルの妹、ヘレナ。 ジゼルとは十歳年が離れている。 「あ、ユンディルお兄ちゃん、おはようございます」 「おはよ、ヘレちゃん」 ヘレナはジゼルに、硬貨の入った巾着とメモを手渡した。 「ユンディル、付き合ってくれない?」 「もちろん」 ジゼルはスカートの土埃をはたいた。
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