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「おらおら、お前ら解散だぞ」  既に出来上がって立つことすら無理な酒井以外は部屋を出ていく。でも一人、コートを着て帽子を被り、外に行く支度をする女の子がいた。聞けば地元のコでこれから歩いて帰るという。外は大雪。あれだけ積もっている。かといって俺の部屋に泊める訳にもいかない。酒井に送って行けよと言ったところで歩くのは疎か、起き上がれる状態でもない。仕方なく、俺も帽子に手袋を出し、支度をした。  深々と降る雪の中を二人で歩く。ユキとは違う背、歩き方に違和感を覚える。真っ白な車道は歩道との区別も見えず膝の高さまで積もっている。車の轍を選んで坂を下りる。途中、女の子がコケそうになり彼女の肘を掬い上げた。 「八木田橋さんって彼女いるんですか?」 「……いや」  この子がユキだったら俺はどんなに幸せだろうと思う。地元でここでの生活が当たり前で下界が非日常な人間。 「……でも好きなコはいる」 「片思い、ですか?」 「両思いだけど片思い、だな」 「???」  まあ、変だけどそんなトコだ、と返事をした。直に彼女の自宅に着いて中に入るのを見届けてから再び歩く。さっきの酒が効いたのか、登り坂で息が切れてフラフラする。途中、コンドミニアム棟の脇を通りがてら、ユキの部屋を見上げた。既に明かりは消えていて、ユキはもう眠ってるんだろうと少し安堵した。 .
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