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数本、ユキと滑り下りる。ユキの後ろから追う。俺が開発に携わった板。ここまで上手なコが使ってくれるのは嬉しかったが、それだけにあの古臭いフォームが気になって仕方ない。カービングなんだからあんなに力を入れずとも曲がれるだろうに、本人だってもっと楽に滑れるだろうに。そう思いながらユキの後ろをついていると3本下りきったところでユキの膝が僅かに曲がらなくなった。リフトを降り、再び上級者コースに行こうとしたユキを追い掛ける。俺はユキの横に並び、奴の腕をつかんだ。
「な、何するんですか!」
「もう、危ない。膝が笑ってるだろ?」
そして俺は初心者コースを顎で指した。ユキは不思議そうな顔をした後、またムッとした顔をして俺の腕を振りほどいた。そしてプンっと怒るようにソッポを向いてコブを下り始めた。
「……ったく。普通生徒はインストラクターの指示には従うだろ、アホ」
跡を追う。滑り下りるユキの屈伸が浅く、案の定、ユキはコブに足を取られて途中でコケた。
「言わんこっちゃない……」
そう思いながらユキに追い付き、コケたユキの山側に止めた。ストックを差し出した。ユキは差し出された助けに不満そうに掴まって起き上がった。
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