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「岳史?」
「転んだときに傷めてたかもな。悪い、颯」
肩車をしてもらえなくて颯がしょんぼりと下を向いた。すると生田が立ち上がって颯の前にしゃがんだ。
「は、颯っていうのか? 肩車してやるぜ?」
「生田??」
颯は突然の申し出に躊躇しているのか、ユキの顔を見た。
「ほら颯。キュウリやっつけたスゴいお兄ちゃんが肩車してくれるって」
ユキにそう言われて、颯は手のひらを出した。そして生田とハイタッチをする。生田を正面に見ていた颯は生田に背を向けた。つまりは肩車を受け入れた証拠。生田は恐る恐る颯を肩車し、立ち上がる。
「こ、こんなんでいーのか?」
不安がる生田が言う。妙に引け腰で笑えた。
「ああ。サマになってる」
「颯、どう? お父さんより背が高いから眺めもいい?」
颯は頷いてにこにこする。俺は横にいる菜々子ちゃんを見やる。不思議そうな顔をしていた。
「どした?」
「ううん。私も小さい頃あんなだったかな、って」
「ああ。よく肩車したな」
「うん」
小さかった菜々子ちゃんも17歳。あっという間だった。可愛いという修飾詞より綺麗という言葉が似合うようになってきた。
「いつか……」
菜々子ちゃんは生田を見ながら瞳をキラキラさせている。
「いつか私もそうなるのかなあ、って」
「そうなる?」
「うん。赤ちゃん出来て、育てるのかなあって。まだ高校生だし、未成年だし、ものすごく遠い未来のような気がしてたけど……。すぐでもいいなって」
「すぐ……??」
「うん。すぐにでも欲しい!」
「な!」
だって恋雪ちゃんも深雪ちゃんも颯くんも可愛いんだもん!、と笑う。
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