3234人が本棚に入れています
本棚に追加
「ああっ、すみませんっ」
彼女は爪を眺めてるうちにテーブルに置いたコップを倒し、俺に謝ってきた。
「ごめんなさい、すぐ拭きますから」
彼女は慌てておしぼりで拭こうとしたが、おしぼりが水分を吸い取らず、逆に水を押しやってしまった。
「やっ……!」
「……ああっ!」
彼女は慌てた。その水はカウンター上に置いた俺の携帯を濡らしていたから。防水機能があるとは言えど濡らすのは良くない。俺は急いで携帯を取り上げた。
「ご、ごめんなさい……」
眉をハの字にして困った顔をしてる。壊れたかと心配しているんだろう。俺の中の悪魔は悪知恵を働かせた。
「あ、画面がチカチカして……あれ?、真っ白だ……げっ、壊れた」
「あ、や、やだ。すみません、どうしよう……」
「あーあ……」
「べ、弁償します」
彼女はまた眉をハの字にする。彼女の困った顔が面白くて、つい、からかいたくなる。
「弁償っていっても領収書のやり取りとか面倒だし……」
彼女は俺の着ていたスクールの赤いウェアに視線を落とした。上下とも真っ赤。胸には“スキースクール”の文字が刺繍されている。
「あのさ、スキースクールのレッスン受けてよ」
「スクール?」
.
最初のコメントを投稿しよう!