3235人が本棚に入れています
本棚に追加
何の防寒着も見にまとっていないユキは、すげえ無防備に見えた。ミニコンビニまで戻りワインを探す。喉が渇いてたから缶ビールも取る。レジに向かう途中の棚で、小箱が見えた。
「……」
ちらっとレジを見る。知らない野郎で多分バイト。俺はそれも手に取り、そいつに軽く咳ばらいをして牽制し、会計を済ませた。再び315号室に行く。小箱はダウンジャケットのポケットにしまった。性欲処理とは違う。ユキを、ユキの全部を欲しいと思った。
ユキの部屋に戻るとユキはキッチンで料理をしていた。俺はダウンジャケットを脱いで壁に掛ける。テーブルにはもうつまみが並んでいた。コンロには鍋とフライパンが火に掛けられている。俺は缶ビールを開けてユキに手渡し、乾杯をした後、ユキの横で手伝う。ユキは白いワンピースみたいなセーターを着ていて、油が跳ねたら勿体ないと思い、コンロの前に立ちフライパンで揚げていた魚を箸で返した。
隣に目をやればユキの頭。こいつ、つむじが二つある。相当意地っ張りかもしれない。強がりだよな、確かに。ユキは鍋の蓋を開けて中の肉巻きみたいなのを取り出し、まな板に乗せて箸で押さえながら器用に切り分けて盛りつける。揚がった魚も切り分けて盛る。ユキが鍋や菜箸を洗う間に出来上がった料理をローテーブルに運び、ワインを開けた。グラスに注ぐと、ユキはシンクの前で爪を見ていた。
.
最初のコメントを投稿しよう!