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ユキ……。こんなスキー馬鹿の俺でもいいだろうか、告白しようと思った時だった。
「だからね、ぜーったい会社辞めない!」
ユキは、やっと正社員になれたんだもん、私立四大まで出してもらって契約社員で肩身が狭かったし、ボーナスもらえるし、これから母にも恩返ししなくちゃね、と言った。
「……」
それはそうだと思う。それぞれに生活の基盤はある。俺だってここに来る前はそうだった。雪を求めて下界から来る。普段とは異世界のゲレンデに来て雪と戯れる。そして時間になれば何事も無かったようにまた普段の生活に戻る。ここに来る奴らにとって夢の地で、生活の場ではない。
「ヤギ? どーしたの?」
ユキは酔って頬をほんのり赤らめて俺の顔を覗き込む。
「いや……。インストラクターにバイトもいるけど待遇が違うしな。宿舎だって正社員は個室だけどバイトは相部屋だから」
「ふうん。うちもね正社員には長期休暇とか育児休暇とかあるけど、契約社員には無いの」
ユキは、だから出産した後も続けられるしね、5年もしがみついたんだもん、とワインを飲む。
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