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「個人レッスンで申し込みして俺を指名して。その後は別行動。そうすれば俺はただで給料もらえるってコトになるから」  コイツがあの板でどう滑るのか興味もあった。 「……はい」  彼女は少し考えた後、俺の顔を見上げた。はい、って言うしかないよな。彼女は再び俺の胸を見た。透明ポケットが付いていて、そこには社員証が埋め込まれてる。 「あ、俺、八木田橋。午後の申し込みは12時まで。カウンターはあそこ。じゃ」  俺は笑いたいのをこらえて仏頂面をしてカフェテリアを出た。外から彼女を見ると眉をまだハの字にしてため息をついていた。  俺はインストラクターの詰め所であるスクール小屋に戻った。地元住まいの同僚の酒井は、小屋の小さな窓から向かいのカフェテリアを見る。 「結構可愛いじゃん。ヤギの元カノに似てね?」 「そうか?」 「何話してきたんだよ?」 「別に」  そんな素っ気ない返事をしつつも自分でもそう思った。元カノよりもっと年は上だと思うけど、なんとなくの外見の他に爪を飾ってるところとかクリーム系のパスタにチーズケーキを注文してるところとか。なんとなく重ねる。 .
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