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 半分だけ食べてフォークと取り皿を置いた。再び沈黙する。 「……お皿洗っちゃうね」  ユキは席を立ってシンクに向かう。俺はご馳走になった礼に、せめて洗い物をしようとユキを追い掛けた。ユキはその飾りの施された爪をした手で、水道のレバーを上げて湯を出す。背後から寄り、そのレバーを下げようと、手を伸ばした。 「俺、洗うよ。爪、傷がつくんだろ?」  自分の二の腕にユキの二の腕が当たる。目の前にはユキのつむじ。髪からは甘い匂いが漂う。俺は無意識に、それぞれの手でユキのそれぞれの手をそっとすくうようにした。細い癖に柔らかい指。 「こんな爪してるから料理なんてしないのかと思った……」  ユキは、それは偏見、と呟いた。ユキの手を握るようにして、爪をなぞる。食べたくなるような淡いオレンジ色の爪に雪の結晶があしらわれている。細かい模様に書いたわけではないだろうけど、その繊細なモチーフを指の腹でなぞる。更に甘い香りが鼻を突き、俺は我慢できなくて手を離してふわりと抱きしめるように自分の腕を交差させた。ユキの体がピクリとして、ぎゅうっと抱きしめそうになるのを我慢した。 「たった……」  逃げてくれ、とも思う。ここまでなら冗談だとごまかせる。そしたら友達でいれる。この先もずっと。 「たった三日で……」  でもユキは逃げなかった。体を強張らせたままじっとしている。いつもみたいに突っぱねてくれ、噛み付いてくれても構わないという俺の我儘な願いは叶わなかった。 .
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