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「アイスバーンに新雪はチェーンでも滑るから気をつけて帰れよ」  俺は服を着るとそれだけを言ってユキの部屋を出た。ベッドの上で起き上がったユキは恥ずかしそうに布団を胸に当てて見送ってくれた。オートロックの扉が閉まる。その冷たい金属音にユキとの関係がこれで絶たれたかのように感じた。廊下の窓から外を見る。雪は降り積もって駐車場の車をすっぽり埋めてしまった。  コンドミニアム棟から本館に抜け、ミニコンビニ脇の鉄扉から宿舎に戻る。長い廊下の先にある俺の部屋から賑やかな声が聞こえた。 「ヤギ、遅いよ~っ」  茹蛸のように赤い顔をした酒井、インストラクター二人、知らない女が3人で卓上コンロを囲み、鍋パーティーをしていた。 「酒井、スナックでやるんじゃなかったのか」 「いっぱいで入れなかったんだ」  いいじゃん、いいじゃん、とカップ酒を開けて俺に手渡す。 「ったく。俺明日何時から仕事だと思ってんだよ」 「ヤギは6時から除雪、俺は8時からベル」  分かってんなら終わりにしろよという俺の台詞も聞かずに酒井は、ヤギ、駆け付け3杯だよ~、とカップ酒を更に二つ開けた。 「よし。3杯飲んだらお開きだぞ、いいな??」  喉も渇いてたし、寝付けそうにないし、飲めばさっきの出来事を全て忘れられる気もした。俺は立て続けに3杯飲み干した。喉にも胃にも来る。 .
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