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日差しには春の陽気が感じられるが、空気はまだひんやりと冷たい季節。
真っ青な大空の下に広がる原っぱのど真ん中には一応、申し訳程度に舗装された道がずっーと一直線に伸びていた。
人の気配はまるでない。正真正銘、田舎道と呼んで差し支えないだろう。
むしろギリギリで道としての役割をはたしている、という評価が妥当かもしれない。
「うぅ・・ぁ・・。」
そんな田舎道で生死の淵にたっているかのような青年のうめき声があがった。
旅人・・・・にしてはずいぶん軽装備、というかチャラついた装いである。
それなりに二枚目なのだろうが今はひどく衰弱していていて覇気がなく、お世辞にも格好良いとは言えない。
さしずめ行き倒れ寸前の貧乏人、といったところか。
下手すればチンピラ(本人はこれがイケてるとおもっている)と思われても仕方のない印象な彼(とはいえ今は衰弱死寸前だが)がこのような田舎道を歩いていることに特に理由はない。
ただなんとなく、気のおもむくままに歩いてきた結果がこの有様だった。
彼の携帯食料や水が尽きてもう4日になる。
食料は野ウサギやヘビを捕まえれば確保できたが湖や川がなかったので水だけは雨が降ることを祈るしかなかった。
「喉・・・・渇いた・・・・。」
もう何度この言葉を口にしただろうか。このままだと本当に死んでしまうかもしれない。
街・・・・いや、村でもいい・・・・。人が住んでいるところにたどり着きさえすれば・・・・!
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