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そんな考えが頭の中をぐるぐると縦横無尽に駆け巡っていたが、そのうちそんなことを考える余裕もなくなるだろう。
あと2日もこの状況が続けば自分はカッラカラに干からびてるな・・・・と彼は自分の末路を想像して体をブルッと震わせた。
ふと、自分の懐に大事にしまわれた財布を確認する。
とある事情で金には困っていない彼だったがこの状況では金貨も鉄屑同然。
正直今の状況では金なんて荷物にしかならなかったが街につきさえすれば懐にものをいわせていくらでも水が飲めるし、まともな食事もとれる。
野ウサギはともかくヘビはもうこりごりなのだ。
宿があるかはわからないが民家でも頼み込めば一晩くらいは泊めてもらえるだろう。
つまり、体力が尽きる前に街にたどり着くか、街にたどり着く前に力を使い果たしてのたれ死ぬか、という時間と空腹と体力との戦いである。
とはいえここに誰か他の人間がいたなら既に勝負はついたも同然だと思うだろう。
負けるのはいうまでもなく青年のほうだ。
実際、意識が薄れてきているのか、足取りはふらふらしていてあぶなっかしいし目はどこをみているのかよくわからない。
「やべえ・・・マジで視界が、かすん・・・。」
最後まで言い切る前に青年の体はグラリと前方に倒れた。硬い地面の上に寝転がってピクリともしない。
というよりピクリとも動けない、というのがこの場では正しかった。
(ああ・・・俺、このまま死ぬのかな・・・。)
「だ、大丈夫ですか?!」
霞んでいく意識のなか、彼が最後に聞いたのは4日間待ち望んだ人の声だった。
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