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断章―BLACKCARNIVAL~前夜祭~―
「全員ここに集めろ。最終確認をする。」
男が声をあげた。薄暗い部屋のなか、蝋燭がぼうっと揺らめいている。
それ以外に光源がないのでここにどんな人間がいるのか、どれだけの数の人間がいるかもはっきりしない。
ひとつ言えることがあるとすれば、闇に集まる人間が考えることは大抵の場合ろくでもない企みばかりである。
「わたしにあのむさくるしい連中に声をかけろっていうの?」
先の言葉にたいして不服そうな返事が返った。この場にはにつかわしくない、美しい女の声である。
「文句を言うな。契約を忘れたのか?」
「それはそうだけどそれくらいは自分でやってほしいものね。ここの男どもときたら視線があからさまなのよ。気持ち悪いったらありゃしないわ。ちょっと相手にしてやったらすぐにダメになるし・・・・とことん使えないのよね。大丈夫なの?」
女としては彼らの計画の結果などはどうでもよかった。
彼らがたとえ失敗したとしても自分に不都合はない。成功すれば分け前が自分にも分配される。が、彼女の目的は金ではない。
彼女の懸念するところは彼らが自分の邪魔になるのではないか、ということだけだ。
「やつらの仕事はただの数あわせだ。この計画を達成してしまえばあとは必要ない。」
これが男の返事だった。ようするに「計画達成後、全員処分する。」ということである。
女とは違って彼の目的は金だ。
使えない馬鹿共に金を分けるくらいなら全員殺して一人占めしたほうがいい、というのが彼の考えである。
部屋には当の馬鹿達が何人かいたのだが、馬鹿騒ぎしていたので聞こえなかったようだ。
「とりあえず僕が彼らを集めるよ。それでいいでしょ?」
「たすかるわぁ。よろしくね。」
チッと男の舌打ちが聞こえたが彼女は気にしない。
先ほどの少年はさっそくボスが集合だってさ~などと声をはりあげていた。
「そろそろ会えるかしらねぇ。“英雄さん”。」
彼と再会したときの想像をして彼女は思わず唇を吊り上げた。その微笑みに苛烈な愉悦を纏わせて。
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