闇に捧げる【鎮魂歌―Requiem】

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カインは話を続ける。それはレインにとって全てが未知に溢れていて、聞き入る事に必死になる程だった 「私達は闇に往き、闇を駆使する。そこに神の守護など存在しない。全ては虚無、最初から存在しないのだ。即ち私達はこの世に存在し得ない存在だ。世界の影となる存在だ」 存在している様で存在しない。存在しない様で存在している。 カインの語りはまるで聖書を説くが如く説得力に長けており、その世界に魅了する。 「だが我らも求める物が一つある。それは【霧(む)の境地】だ。全ての根源となる場所こそが我らが望む場所……」 霧の境地……。全ての根源に当たる場所、それをカイン、名も知らぬ兄弟は探し求めているらしい。 「我らはその場所を誓約の下に【Zero―始まりの地】と呼んでいる。君にもそれを手伝って欲しいんだレイン。闇に往き、闇を駆使し、Zeroを見つけ出して欲しい」 そうこうしている内に、目的地に付いたのか馬車は歩く事を止め、静寂が訪れる カインはそれでも視線を変える事はなく、レインを貫く様に見ている。レインはそれに対して終始無言、頷く事で返した カインは満足そうに頷いては、馬車の扉を開けた。馬車を降りるとそこは無数の木々が辺り一面に生い茂り、まるで樹海を思わせるようだった まだ目的地では無いようだ…… 森に目を奪われたのも束の間、背後にここまで馬を駆使してきた男の姿が目に入った。レイン達と同じく、黒いローブに身を包み顔は分からなかったが、彼は馬車を降りてこちらに歩み寄って来る
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