闇に捧げる【鎮魂歌―Requiem】

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No.365は頷き、兵士に左右を囲まれ歩き出した。手には頑丈な手錠が掛けられ、歩く度に鉄が鳴る音がした 電球に照らされた廊下は長く、時折左右に分かれる道があったが、兵士は迷う事無く道を進んでいく 終始無言で歩き続け、執務室まで着いた。兵士は「失礼します。室長」とだけ言って扉の横にある機械にカードを通した 同時に横に開く扉、No.365が最初に目にしたのは、革製の椅子に深く腰掛ける室長とその脇に立つ全身黒尽くめの男。深くフードを被(かぶ)っている為に、その顔は確認出来なかった 室長は葉巻を喰らいながら、手を振り、兵士を下がらせた。次にNo.365を見下しながら言った 「こいつが先程のNo.365です。お気に召されましたか?お客様」 人形の様に微動だにしない、No.365を見つめたまま、男も動こうとしない 「……………………。」 長い沈黙が続く。その沈黙に堪えきれなくなったのか、室長は気を使う様に話し出した 「やはり気に入りませんか?こいつは実力はあるものの無口で、決して社交的な方では……他の被験者をご用意致します」 そんな室長の話など耳に入っていない『お客様』は、No.365に向かって、ついに口を開いた 「…………こっちへ来い」 先程と違い、お客様に変化が見られた室長は、今が好機とばかりにNo.365を叱咤する 「おいお前!!早くお客様の元に行かないかっ、命令だ!!」 No.365は室長の命令に従い、黒いローブを羽織った得体の知れぬ男の前に立つ。男はNo.365の顎を持ち上げ、上から見下ろす ――今でも覚えている。下に立つ事で唯一見れた彼の顔。俺に名前を与えた人間の素顔を
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