闇に捧げる【鎮魂歌―Requiem】

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「お前、名前は?」 不意に男は、No.365に話しかけてくる 「………………。」 「名前は?」 「Second Generation  第二世代/No.365……」 男はその応えを鼻で笑い、更に付け加えた 「……愚問だったな。名は持ち合わせていないか。なら私が名付けてやろう」 「今日から貴様は【レイン】。そう名乗れ」 「……………レイン」 「お客様、と言うことは?」 お客様の機嫌を伺うように、下から覗き込む室長を横目で睨み付け、お客様は言った 「あぁ。こいつを購入する」 「誠にありがとうございます!!ではこれから契約に……」 淡々と嬉しそうに話す室長を無視し、レインの頭を撫でながら男は言った 「私も昔は父親にこうされたものだ。レイン、もう少し待っていろ。契約を終わらせる」 そうしてレインは一つ頷き、再び執務室から出された。迎えに来た兵士に同じ様に来た道を返され、自室へと戻る レインは何をする訳でもなく、ただ先程自分に言われた言葉を連呼していた 「レイン…………レイン………………レイン」 今まで自分を識別するNo.365から新たな【名前】と言うモノを手にしてレインは妙な違和感を覚えていた 例えようの無い、まるで何もない水面に小さな波が打ったような妙な感覚…… 対した事では無いのだが、この時のレインには十分意味のあるものだった 【名前】を手に入れた 十分すぎる日常の変化がここに生まれた気がした。識別番号じゃなくて名前、機械ではなく人間身 だがその事さえも気付く【心】さえもまだレインは持っていなかった
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