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この幼なさが少し残る顔をした男の子こそ私の彼。一条孝文。
「ちょっとね。もう春なんだなぁ……って。桜が綺麗だから」
「そうだな。一年なんて気がつきゃホントにあっという間だからな。季節の変わり目なんて見えないしな」
「私、またみんなでお花見したいな」
「だったら早く病気なんか治しちまえよ!お前がいない花見なんて、酒がないのと一緒なんだからな」
彼はいつも私にこんな風に優しく接してくれる。それはとても嬉しいこと。彼が笑って話してくれる。それは私にはかけがないこと。でもね、最近辛いんだ。
きっと彼は私に内緒にしてることがあるから。
「梓。ちゃんと聞いてる?でさぁ、聡が俺に言うんだぜ。お前に梓ちゃんは勿体ないって。酷い話しだよな」
「聡君も相変わらずなんだね」
こんな他愛もない話が今の私の全てなんだよね。孝文が話してくれる事が私の世界を作り上げてくれる。
それ以外は幻想でしかない。孝文を通さなきゃ私は世界を知る事が出来ないの。
私は。私は……もっと孝文といたい。もっと孝文と世界を見ていたいだけなの。
思わず涙が溢れた。それを見て孝文が目を大きくさせた。心配なんてかけたくないのに。
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