一号店

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『過去を変えたいですか?』 冬になり、夜は深々として静かに闇を広げていく─── デリラとナイアスは夜も更けた暗い雪道を静かに歩いていた。 二人ともローブを身に付けていて顔は見えない。 街から少し離れた林の開けた所にある一軒の家を目指しているようだ。 二人がその家の前に来ると同時に玄関が音もなく開き、一人の少女が様子を窺うようにそっと出て来た。 外は雪がちらついているにも関わらず少女は薄着で靴も履いていなかった。 そんな事は気にする様子もなくナイアスが上着のポケットから取り出した一枚の紙と万年筆を少女へと渡した。 そしてその文章を読み上げ始めた。 すると少女が慌てて静かにしてと言った。 「お母さんが起きちゃうじゃない!小さい声にしてください」 「ばか…」 デリラがぼそりと呟くのをナイアスは聞き逃さなかったが気を取り直して読み出した。 今度はとても小さな声、だがはっきり聞き取れる声で。 『これは当店利用に於いての契約書である。 利用できるのは一度である 真実のみを話す事 相当の代価を支払う事 利用後に生じた如何なる物事にも一切の責任を負わない。 上記を理解したうえでの署名で契約が成立するものとする』 聞き終えると少女は躊躇うことなく自分の名前を書き入れた。 奪うようにデリラが契約書を手に取り確認をする。 「契約成立だねキヨカ。 夜が明けてから始めるからそれまで寝ておいで」 デリラはキヨカと握手を交わすと家の中へ戻した。 夜が明けるまで二人はキヨカの家の裏にあるテラスに居ることにした。 「ねえ、何が見えた?」 唐突にデリラがナイアスへ問いかけた。 「キヨカ14歳。母子家庭で妹が一人…名前はサチ。二人は母親に虐待されてるみたい。姉妹の仲は…良いわ差さえ合ってる。まぁこんなところかな」 少し考えてからナイアスが言った。 「妹を助けたいのかー」 「難しいの?」 デリラの独り言の様な呟きを聞き逃さなかったナイアスは心配そうに訊ねた。 「難しくはないけど代価に何を支払ってもらうかはまだ決まってないからそれ次第…そろそろ夜が明けるね」 二人は再びキヨカの元へと向かった。 .
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