出会い

4/5
前へ
/18ページ
次へ
ふと手元の腕時計を見ると、スーパーを出てからすでに1時間以上たっていて、日も少しかたむいていることに気がつきました。 空き地の横の道を楽しそうに買い物袋をもって帰る親子を眺めつつ、 今更ながら家族がいない一人暮らしって結構さびしいと、しみじみ思ってしまいました。 「なんだぁ?こいつぁ」 その時、ふとすぐ近くでいきなり声がしたものですから、 驚いてあたりを見渡しましてしまいましたが、先程の親子はもう小さくなっていましたし、こんなに近くで声がするのはおかしいと、首をかしげました。 まさかとは思いつつ下の狐に目をやると、いつの間に起きたのか、頭をあげてクリクリした目でこちらを眺めているではありませんか。 なんてかわいいのでしょうっ。 目をそらすことができず、しばらく見つめあっていると、 「なにがしたいんだ、こいつ。」 と、また声がしてきました。 狐が喋るわけがないのでまたびっくりして辺りを見渡すのですが、やはり誰もいません。 「空耳ですかねぇ・・・。」 と独り言をつぶやくと、 「は?お前この声聞こえたりしちゃったりすんのか?」 とさらに興奮したような大きな声がして、これはいよいよ空耳ではないような気がしてきました。 目の前の狐は相変わらず綺麗な瞳を俺にむけていて可愛い・・・っじゃなくて、 いや、そんなまさか、 口だって動いてないし、 そもそも狐と人間じゃ口内の構造が違うんじゃ・・・? ありえないですもん。 「俺の声わかったら返事してくれないか?」 ど、どうなってんでしょう? あぁ、狐がばっちりこっちみてます。心なしか睨んでいるような気がします。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加