黒き月が浮かぶ夜

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あれから数日経った日の夜。 学園都市のとある森を歩く立花我零の姿があった。 彼は、辺りを警戒するような鋭い眼差しで森を闊歩していたが、ふと何かを察知しその足を止めた。 「…出てこい」 低い声でそう我零が呟くと、辺りから機械の動作音のような不気味な音が複数聞こえてきた。 「ヒューズ・SUZUSHINA…か」 そう呟き辺りを見渡すと、木々の間から無数の人型をした機械がその姿を覗かせていた。 …ヒューズ・SUZUSHINA。 以前、梓沙達が戦い苦戦を強いられた、超能力を使う「人間のような機械」。 外見から判断するに、以前よりスマートな体型をした機体が多く、理想の完成機まであと一歩といったところの試作機か。 しかし、それにしても数が多い。 試作機といった役割やコストを考えるに、これほどの数は必要なのであろうか? …いや、もしかしたらこれは完成機のコストダウン機…すなわち、量産機なのかもしれない。 いずれにせよ、由々しき事態であるという事には変わりない。 我零は、そんなヒューズ・SUZUSHINAの量産機を眺めると、深くため息をつき右手を上へとかざした。 「…重力崩壊、漆黒の月…!」 我零がそう叫ぶと、彼の右手の甲に装着されている霊装「漆黒の月」が薄気味悪く光出すと同時に、上へかざした手の先にあの黒い球体…漆黒の月が姿を現した。 「…漆黒の月よ、存分に食らえ…」 ヴォォォォン…!! ……… 翌日。 梓沙と未緒はイージス本部に招集をかけられていた。 どうやら、新たな未確認災害の情報が入ったらしく、二人は会議室にて海谷からの指示を仰いでいた。 「…昨夜、第一五学区にてペインが原因と思われる通信障害が発生したわ」 『通信障害?』 海谷の言葉に未緒が聞き返す。 どうやら、今回の未確認災害は第一五学区にて発生した通信障害のようだ。 「えぇ、どうやら音を意図的に反響させて通信を妨害しているみたいなの。あそこには多数の企業が密集しているから、このまま通信障害が続けば学園都市の経済に大打撃を与えてしまうわ」 『…音を反響…まるで山彦ね。何かの能力かしら…』 「そう、通信障害が起こったのと同時刻、観測班からペインのAIM拡散力場が現場から複数観測されたとの情報が入ってね。未緒ちゃんの言う通り、能力者がこの通信障害を引き起こしてると見て間違いないわ」
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