黒き月が浮かぶ夜

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『分かりました。では早速現場へと向かい、通信障害の元を絶ってきます』 「待って。今はまだ正午、人が多すぎるわ。万が一戦闘になればかなりの被害が出ちゃう。だから、作戦開始は明朝○三○○時にしましょう。和ちゃんと玄ちゃんにも私からそう伝えておくから」 海谷の言葉に「了解」と頷き、会議室を後にする梓沙と未緒。 二人がいなくなってから数分経ち、今度は八神が入室してきた。 『失礼します』 「あら、結衣ちゃん。待ってたわ」 『遅くなってすみません』 「いいのよ、気にしてないわ。それで、何か分かった?」 『はい、先月磯山未緒らが交戦したヒューズ・SUZUSHINAの試作機の件ですが、どうやら製造元は木原一族の管轄にあるあのRO研究所のようです』 「…やはりね。これも原石と呼ばれるものと何か関係があるのかしら…」 『今のところその関連性は報告されていませんが、間違いなく何か繋がりはあるでしょう。引き続き調査を続行します。…それと…』 そこまで言うと、八神の声のトーンが急に下がった。 『…樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)の件ですが、先月、統括理事会の理事長の一人が私用で使用したとの情報が』 「…誰かしら?」 『白河(しらかわ)理事長です』 「白河理事長…。確か、脳科学を中心に能力開発分野で数々の功績を残し、天才の名を欲しいがままにしてきた…」 『はい、そして若干16歳にして今年理事長に就任した、あの白河愁壱(しゅういち)理事長です』 「…そう。しかし、あの樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)を一体何に?」 『確かな使用目的は分かりませんが、その後、頻繁にRO研究所へと足を運ぶ白河理事長の姿が目撃されています』 「それってつまり…」 『はい。あのヒューズ・SUZUSHINAの試作機の脳にインプットされた発電能力…超能力者(レベル5)に到達する少女の能力MAPは…』 「白河理事長が提供した」 『…はい。つまり、木原一族と白河理事長はペインと繋がっている可能性が』 「…でも、断定するにはまだ証拠が不十分ね。その少女の能力MAPの出元にしろ、不確定要素が多すぎるわ」 『しかし、警戒する必要はあります』 「そうね…」 深刻な表情で深くため息をつく海谷。 …木原一族と白河理事長。 不確定事項ではあるが、もしこの二つがペインに組しているとすれば、それは想像もしたくない大問題である。
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