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「…いずれにせよ、この事は他のみんなには秘密にしておいて。理事会がペインと内通しているかもなんて…もし知ったら士気に大きく影響でるわ」
『分かりました』
八神はそう言うと、海谷に一礼をして会議室を後にした。
「…12人の理事長の一人、白河愁壱…か。脳科学とヒューズ・SUZUSHINA…この繋がり、悪い予感しかしないわ」
そう言って窓の外を眺める海谷。
「アレイスター…これもあなたのプランの一つなのかしら?」
………
翌日の早朝、時刻は午前三時を過ぎた頃。
梓沙と未緒は通信障害の原因を絶つべく、第一五学区の商業ビル街を歩いていた。
昼間は人で溢れかえっているこの場所だが、この時間ともなると人気はサッパリ無い。
いや、ここだけではなく、人口の八割を学生が占めるこの学園都市において、人の流れというものは昼間を除けばほとんど無いに等しい。
その理由として、学園都市の方針で学生の夜間外出が規制されているからだ。
…パンッ、パンッ…
静まり返ったビル街に、未緒の手を叩く音が響いた。
「未緒、何してるの?」
『反響チェックよ。目標が近くにいたら、もっと山彦のように音が響くはず』
不思議そうな顔で尋ねる梓沙にそう答える未緒。
現在も尚続いている通信障害。
意図的に音を反響させて妨害を行っているという見解からすると、彼女の行動は原始的ではあるが目標探知という点で的を獲た合理的な行動である。
「なるほど。でも、思ったより音、響かなかったね。となると…この辺じゃないって事か」
『…うん』
「和人さん達の方かな?」
『そうね。他行ってみましょう、梓沙』
そう行って歩き出す未緒。
すると…
…ピリリリリ!!
不意に梓沙の携帯電話の着信音が鳴った。
「…あっ!」
『梓沙!電源オフにしてなかったの!?』
「ご、ごめん未緒…」
そう言って急いで携帯の電源を切る梓沙。
当然、着信音も途切れるハズだったが…
…ピリリリリ!!
『梓沙!早く電源切りなさい!!』
「…えっ?これ、私じゃないよ?」
『なんですって!?』
…ピリリリリ!!!
…ピリリリリリリリ!!!!
電源を切ったのにも関わらず、依然として辺りに鳴り響く着信音。
そして、その音はまるでぶつかり合い反響したかのように次第に大きな音へと変わっていった。
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