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「な、なにこの音!?」
『もしかして…当たり!?梓沙、耳を塞いで!』
そう未緒が叫ぶと同時に、反響により増大された高音の振動によって耐えきれなくなった周辺のビルの窓ガラスが一斉に割れた。
『…くっ!』
苦い表情で空を見上げる未緒。
彼女の視線の先には、今まさにこちらに向かって降り注ごうとしている大小様々な無数のガラスの破片があった。
地球の重力に従い落下する、まるで剣の雨のようなおぞましい光景。
このままでは二人とも無事には済まない、そう判断した未緒は上空に向けて右手をかざした。
ズカァァァァン!!!!
直後、未緒の右手から燃焼圧砲が放たれ、赤い光が二人の上空を一直線に焼き尽くす。
しかし、彼女の燃焼圧砲の放射幅は決して広いわけではない。
当然、降り注ぐガラスの破片全てを焼き尽くす事は出来ず、直撃を避けたガラスの破片が二人の周囲に降り注いだ。
ガシャン!という音をたてて、二人のすぐ脇を無数のガラスの破片が次々と落下し、砕ける。
「……!!」
祈るようにして耳を塞ぎながらその場にしゃがみ込む梓沙。
未緒の燃焼圧砲によってガラスの破片の直撃は避けたが、それでもすぐそばで地面に落下し砕け散るガラスの破片は十分に驚異である。
「…っ痛ッ!」
粉々に砕け飛び散るガラスの破片。
その一欠片が梓沙の左腿を切り裂いた。
『大丈夫!?梓沙!』
「うん。この程度のかすり傷、大丈夫だよ」
そう言って自分の左腿に目をやる梓沙。
切り口から血が流れていたが、彼女の言う通り、確かに傷は浅く動く分には全く支障はなさそうだった。
「それよりこのガラス、何とかしないと!未緒に傷なんかつけさせてたまるかっ!!」
そう言って立ち上がり、右手を上にかざす梓沙。
…ヴォォォォン!!
重く鈍い音が辺りに響くと同時に、上空から二人に降り注いでいたガラスの破片が突然辺りのビルに向かって刺さりだした。
それは、まるでビルが地面となり地球の重力の向きが90度曲がってしまったような光景であった。
そう、これこそ梓沙の能力…重力操作。
彼女は頭上空間の重力のベクトルを90度変更させ、降り注ぐガラスの破片を周辺のビルへと向かわせたのだ。
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