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それから少しして、全てのガラスの破片がビルへと「落ち」終えた。
「…ふぅ。未緒、怪我はない?」
『えぇ、大丈夫よ。ありがとう梓沙』
そう言って梓沙に笑顔を見せる未緒。
気づけば、辺りに鳴り響いていた高音が止んでいた。
「…あれは?」
不意に前方を見てそう呟く梓沙。
彼女の視線の先には一人の男が立っていた。
彼がいつからそこにいたのかは分からないが、全く人気がないこの場所で、しかも先ほどの大惨事にも全く動じずに立っている。
…普通ではない。
『恐らく、さっきの山彦の正体…』
「じゃあアレが通信障害の原因の未確認災害源?」
『えぇ。それにしても…嫌な顔』
目の前に現れた男に対して悪態をつく未緒。
彼女がそう言うのも無理もない。
なぜなら、彼の表情が機械のように無表情な面付きをしていたからである。
そう、まるで以前戦ったヒューズ・SUZUSHINAの試作機のような…
『…梓沙、やれる?アレは恐らく…』
「大丈夫!学園都市に災いをもたらすものを排除するのが私達の使命なんだからっ!!」
梓沙の不安を危惧して声をかけた未緒だったが、意外にも、彼女の言葉を遮るようにして梓沙は強気にそう言い返した。
『…分かったわ。じゃあ、交互に波状攻撃!いい!?』
「オッケーポッキー!」
未緒の合図と共に目標に向けて駆け出す二人。
隊列は、未緒が先行し斜め後方から梓沙が続くといったカタチだ。
みるみるうちに目標との距離が縮まる。
『(…間合いに入った!)』
そう心の中で呟き、九字兼定を抜刀し目標に斬りかかる未緒。
『もらったぁ!』
《もらったぁ!》
ガキンッ!!!!
突如、未緒の声が二重に聞こえ、刀と刀がぶつかり合う音が辺りに響いた。
『…なに!?』
《…なに!?》
再び声が二重に聞こえ、目の前の光景に驚きの表情を見せる未緒。
そこには鏡のように丸写しな自分の姿があった。
『こいつ…私と同じ動きを!』
《こいつ…私と同じ動きを!》
どうやら、未緒が掛け声と共に目標に斬りかかった瞬間、目標が未緒と同じ姿に変わり同じモーションをとったようだ。
「…よけて!」
一瞬呆気にとられた未緒だったが、不意に聞こえた梓沙の声にふと我に返り、後方へ跳び跳ねた。
すると、同時に未緒の姿をした目標も後方へと全く同じ距離を跳び跳ねた。
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