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未緒と同じ倒れた姿勢のまま「元」の男の姿に戻るヒューズ・SUZUSHINAと思われる目標。
『(…やはり、音に反応して…)』
機械のような無表情な男の様子を見て思考を巡らす未緒。
音の周波数から何らかの方法(演算)で対象の姿形、AIM拡散力場を把握し、山彦のようにエコーさせ現象を再現させている。
…恐らくはそんなところであろう。
『(…だんだん見えてきたわ、打開策。ここは梓沙と連携して…)』
そう思ったところで、未緒の思考は遮断された。
突如、カァ、カァ…というカラスの鳴き声が聞こえてきたと同時に、姿をカラスに変え飛び立つ目標。
空を見上げると、そこには群れをなして飛ぶカラスの姿があった。
『(くそっ!何てバットタイミング…!!)』
予期せぬ事態に苦虫を噛むような表情で飛んでいく目標を睨みつける未緒。
どうやら、早朝という時間帯が思わぬカタチで不運を招いたようだ。
『能力が動物にも対応しているとは…くそっ!』
そう未緒が吐き捨てた時には、カラスの姿と化した目標は既に数十メートル先のビルの屋上へと姿を消していた。
『今見失うわけには…!梓沙、追って!』
「分かった!」
そう返答し、梓沙は目標が姿を消した屋上のビルへと向かって駆け出した。
「素直に階段って、そんな悠長な事態じゃないね…」
ビルを眺めてそう呟く梓沙。
確かに、馬鹿正直に入り口から入っては屋上にたどり着くには数分はかかる。
「ここは…飛ぶ!」
そう叫ぶと同時に、梓沙の身体が宙に浮いた。
そしてそのまま、目標の消えたビルの屋上へと飛んでいった。
…重力操作。
そう、梓沙は能力の対象を自分自身に設定し、重力のベクトル変換を経て引力を浮力にして空を飛ぶことを可能にしたのだ。
飛行速度はそれほど速くはないが、それでも馬鹿正直に入り口から屋上へ向かうよりかは遥かに早い。
こうして、ほんの数十秒で目的地の屋上へ梓沙はたどり着いた。
「確かこのビルだったはず…」
《確かこのビルだったはず…》
「…ッ!」
梓沙の声がエコーした。
…近くに目標がいる。
そう咄嗟に判断し辺りを見回す梓沙。
どうやら、このビルの屋上は駐車場になっているようで、辺りには駐車中の車が無数並んでいた。
更に注意深く辺りを見回すと、屋上の隅に梓沙と同じ容姿をした少女…そう、目標が立っているのを発見した。
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