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「奈央、お風呂ありがとうね」
濡れた髪をタオルで拭きながら、私のパジャマを着た紗智が、風呂から戻って来た。
「うん。湯加減、どうだった?」
「バッチリだったよ」
「じゃあ、私も入ってくるね。本とか、テレビとか好きに見てて良いよ」
そして私は紗智を残し、風呂場へ向った。
私は風呂が好きだ。
嫌な事も思い出したりしてしまうけれど、体が温まっていくと本当に幸せな気持ちになれる。
湯船に浮かぶ、紗智の長い髪。
一人じゃないと急に実感して、体だけじゃなく心も温かくなっていく。
紗智に、此処で一緒に暮らさないか聞いてみようか……。
一瞬そう考えた後、すぐにそれは無理だと思った。
人と居る事に慣れていない私は、紗智を傷付けてしまうかもしれない。
突発的に死にたくなったりして、精神的にも不安定だし、本当なら親友だって止めた方が良かったのかもしれない。
でも、紗智と居る時に感じる気持ちは、不安定な私の心を安定させてくれる良い薬になる気がした。
神様が、死に急いだ私を止める為に使った、最後の切り札が紗智なのかもしれない。
そんな事を思った自分が、何だか可笑しかった。
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