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紗智と知り合って一ヶ月が過ぎた。
同じ授業がある時や休み時間、お昼のお弁当の時、登下校。
私達はいつも一緒だった。
全然嫌じゃなかったし、寧ろ嬉しかった。
女なんて、いつも群れててなんて面倒くさい、そう思っていたのに。
紗智は、あれからちょくちょく家にも泊まりに来る。
アルバイトをしているらしく、中々忙しいくせに一人が嫌な時は決まって泊まりに来るのだ。
夕飯の準備をしていた時に、玄関のチャイムがなる。
紗智ならいつも携帯に電話をよこしてから来るし、母かなと思いドアを開けると、紗智だった。
「紗智!どうしたの?」
紗智は「来ちゃった」と申し訳なさそうに言う。
「とにかく入って」
「……お邪魔します」
明かりの下に来た紗智をよく見ると、目が真っ赤だった。
顔には、何かを拭った様な痕がある。
話を聞くのは後だと思い、とりあえず紗智を風呂へ向わせた。
紗智の脱ぎ捨てた制服を拾ってハンガーにかけた時、何処かで嗅いだことのある様な匂いがした。
「薬くさい……」
身内の誰かが入院している所へでもお見舞いに行ったのだろうか。
私達は、黙ったまま夕飯を食べた。
紗智は、さっきから上の空で食事にもあまり手をつけていない。
私は聞きたいことが沢山あるのに、そんな紗智を見ているととても聞いちゃいけない気がして黙っている。
「……奈央」
「ん?」
「何も聞かずに、ただ側に居てくれてありがとう」
また寂しく笑って、紗智が言う。
私は、黙って紗智の横へ行き、その肩を抱いた。
何故そうしたかは、自分でもわからない。
ただ紗智の肩を抱いてあげることが無意識に出来た私は、以前より少しだけ強くなれた気がした。
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