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目が覚めると、病院のベッドの中だった。
まだ生きてる。
別に死ぬ気もなかったけれど。
あんな奴等の為に死んだら馬鹿みたいだし。
ただカッとなってやってしまったことには、反省していた。
私らしくない。
殴られたって蹴られたって、大人しくしているつもりだったのに。
頭を抱えて深く溜め息をつきながら体を起こすと、紗智の姿が見えた。
「紗智……」
紗智は、布団に顔をうずめて眠ってしまっている。
ふと壁の時計を見るともう午後八時を過ぎていた。
紗智に迷惑をかけてしまったな、と思いながら手首に巻かれた包帯を外し、傷に触れる。
切った時は痛くなかったのに、今更になって痛みが走った。
今まで、何度も手首を切ろうとしても切れなかったのに。
生きるって、痛いことばかりだ。
でもここにこうして紗智がいてくれるだけで、死ななくて良かったと少しほっとしている自分が居る。
「……奈央!!」
紗智は、目を覚まして私の事を見るなり、今まで見た事もない様な恐い顔をして私の頬を平手打ちした。
「馬鹿!!あんなことして死んだら馬鹿だよ!!」
痛かった。
私は打たれた頬をおさえながら「ごめん」と謝った。
紗智に引き寄せられ、きつく抱き締められる。
「奈央が生きててくれて良かった」
私の胸は急に苦しくなって目からは涙が溢れていた。
人前で泣いたことなんて、なかったのに。
いつも苦しさも悲しみも、一人で抱えてきた。
そんな弱いものを人に見られたくなくて。
人間らしいところを知りたくなくて。
でも本当は、こうやって助けてくれる誰かが前からいたなら、私はこんなんじゃなかったのかもしれない。
普通の、十七歳になれてたのかもしれない。
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