高峰―Takamine―

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「さて。課題がまだ残ってるし、もう俺がいても邪魔なだけだ。帰るよ」 そう言って部屋を出ようとした高峰を、雪夜は引き留めた。 「高峰、お礼はいくらがいいか決まってるか?」 「そんなのいらないよ。友達だろ」 そう言ってその場を立ち去ろうとする高峰を見て、私は外見だけで嫌な人だと判断してしまったことに後悔した。 そして私はどうしてか、彼にもう少しここにいてほしいと思った。 初めての感情だった。 他人がいると警戒ばかりしてしまうのに、高峰にはそうじゃなくなっている。 彼と話がしてみたい。 そう思っていた気持ちが紗智に伝わったのか「奈央、高峰君を下まで送ってあげて」と言われた。 彼は断ったが、私はそんな彼の後を追った。 「必ずまた来てね。高峰」 高峰は心配そうに言う雪夜に「当たり前だろ」と軽く手をあげ、微笑んだ。 病室を出てエレベーターを待つ間、私は勇気を出して聞いてみたかったことを彼に聞いてみることにした。 「高峰さんはどうして絵を描くことを引き受けたんですか?」 彼は笑って答える。 「雪夜とは長い付き合いだ。それもあるし、何より描いてみたいと思った。それだけだよ」 「上手く描けなかったら……って思わなかった?」 雪夜はもう長くない。 いつ死んでもおかしくない彼を失望させないか。 そんな彼を見て紗智まで悲しむんじゃないか。 私はやる前から失敗ばかり恐れてしまっている。  
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