寂しい微笑み

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「いらっしゃい」 「お邪魔します」 紗智は、キョロキョロと部屋の中を見回している。 「散らかっててごめんね」 「良いよ。急に来たのはこっちだから」 テーブルの上の沢山の料理を見て「両親、帰って来るの?」と紗智は聞く。 「ううん、今日は来ないよ。父親は居ないし、家は母親だけ」 紗智は、何だか悲しそうに「そうなんだ」と言った。 「紗智は……良いの?家に帰らなくて」 一瞬、戸惑った様にして急に笑顔を作り「私は一人だから」と呟いた紗智が何だか切なかった。 私達は、また無言になり黙々と夕飯の準備をする。 「……紗智、今日泊まって行きなよ。そのコンビニのは明日のお弁当にして、家の御飯食べて。残すと勿体無いから」 私は、紗智がいつもの私の様に一人きりの部屋に帰り、沈んでいる様子を想像し、まるで自分の事の様に思えてならなかった。 紗智は、少し困った様な顔をして考えていたので「いいから、泊まってね」と言い、少し強引に返事をさせた。 紗智は、寂しそうに笑って「御世話になります」と頭を下げる。 その時解った。 紗智の笑顔は、寂しさを隠す為なんだって……。  
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