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周りを見回せばみんなざわざわと湧き立っている。やかましいことこの上ない。僕はただ彼女と一緒に……、
「何だこれは?」
「あ、ちょ先生! それは!」
ああ……何ということだ!
僕の世界が音を立てて崩れる。薄汚い先生の手が僕の彼女を汚したのだ。躊躇なく彼女は鷲掴みにされ、蹂躙される。
「こ、これは……! 沼田ァ! 貴様また授業中に卑猥な漫画なんぞ描いておったのか!」
「卑猥とは失敬な!」
思わず声が上ずり、椅子から立ち上がる。その作品は僕が昨晩より取り掛かり、今ようやく絶頂を迎えるところだったのだ。
それを不粋な先生が奪い、蹂躙し……。さらに僕の作品を、彼女を『卑猥』だとォ!? 冗談じゃない!
「いくら先生とはいえ今の暴言は許せません! 即座に謝罪と彼女の解放を要求します!」
「解放だぁ? 寝言を言うな、沼田。さあもう話は終わりだ。お前は放課後生徒指導室に来い、いいな」
卑怯にも先生は彼女を人質に取り逆に僕に要求を返してきた。悔しいが彼女のために生徒指導室に向かうしかない。
「くそっ……」
僕は舌打ちをすると椅子に座り、また別の原稿を──
「だから描くなと言っとるだろうが!」
先生は卑劣極まりないことに僕の作品五つを奪い去っていった……。
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