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ここで城内からその状況を見ていた人物が2人いた。
「カイ……はやくて…すごい!!」
「……………」
リリスにここに留まるよう言い付けられていたシーラとイヴァは、その一部始終を櫂が吹き飛ばされて出来た穴から見下ろしていた。
最近漸くまともに喋れるようになっていたシーラは櫂の常識はずれな速さに思わず言葉が漏れる。
しかしそれを聞いたイヴァは、珍しく驚いた表情をして彼女に視線を移した。
「あなた見えたの?」
「う~ん…しゅこし…」
さしすせその発音が苦手なシーラは噛みながらもその質問に答える。
しかし何故王族護衛隊隊長であるフィオンですら見切れなかった速さをシーラが見れたのか。
それは彼女が患わっていた難病に関係していた。
"進行性魔狂症候群"
シーラが苦しんでいた遺伝子の突然変異であるこの病気は、今までに子供にしか発症は見られない。
何故なら小さな体に収まり切れない膨大な魔力は、発症者が成人を迎える前にその命を奪ってしまうからである。
それも5感を奪うという最悪な形で。
しかし、櫂によって新しく命を貰ったシーラは膨大な魔力を体に残したまま病気を克服することに成功した第一人者。
それ故彼女は年齢は小さくとも、実は賢者にまで及ぶ程の潜在能力はあるのである。
だがその事実を知らないイヴァは戦闘用に創られた自分ならともかく、何故温室育ちであるシーラに櫂の姿が見えたのかが謎で仕方がなかった。
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