子猫

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「さみ……」 玄関が開いて、リビングには細く冷たい風が入り込んだ。 俺のアニキが、きっと震える手で玄関の鍵を開けたのだ。 23時か。 今日は21時には帰る予定じゃなかったか? 「さっみいいぃい!! しかも脱げねぇえ!!」 雄叫びに近い声を上げながら、玄関は中々に騒がしい。 おそらく、かじかんだ手ではブーツが脱げないのだろう。 「うるせぇなぁ……」 カッコ付けてエンジニアブーツなんか履きやがるからだ。 もうぬるくなってきたミルクティーのはいったカップを、両手で揺すりながら俺はコタツを出れないで居る。 ほっこり温もりながら、騒がしい方へと視線を送る。 「どけ、カイト!!」 「はぁ!?」 ドカドカと足音が響き、リビングのドアが開いたと思いきややたらガタイのでかい野郎がコタツにダッシュしてきた。 スライディングで入り込み、全身をすっぽりとうずめた。 「……コタツムリ…」 「てめぇ……っ」 濡れてカールした髪には、払い落としきれていない雪がまだ残っている。
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