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「そう、だったんだけど……」
そうだった、って。
アニキは過去形で言う。
「何なんだよ? そういややたら遅かったね?」
「あのさぁ、ケーキ、また買ってやるから」
「……」
「許して!!」
――ゴソッ
「……!? アニキ……なんか音しなかった?」
「あー……」
箱だ。コタツにスライディングする前にそっと置いた、今はちょっと離れた所にある真っ白な箱。
「見ていい?」
「ケーキ、入ってないよ?」
もうわかってるっつーの。
俺は無言で箱を持ち上げ、コタツに置いた。
またゴソッと物音がたつが、驚かない。
「……」
底に溶け固まった雪と泥汚れ。
ケーキの代わりに入っていたのは、生クリームより真っ白な子猫だった。
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