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『ペットはどうしても先に死んじゃうから、嫌い』
アニキはそう言っていた。
あの頃が随分昔のことに思える。
手首をこの猫に引っかかれたのか、あの時の傷に被って血が滲んでる。
「随分薄くなったね」
「……え?髪!?」
「ばーか、傷だよ」
「はは、こっち?まあね」
深く広く切った手首の古傷、チラついたすさんだ記憶に蓋をした。
丸いクッションをストーブの傍に置いて、子猫をそこに寝かせた。
口を開けて、手足にも力が入らないようだった。
暖かい空気の中、コイツは冷たくなっていくのだろう。
「じゃあ、俺寝るわ」
「ああ、お休み」
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