夢と未来への奏で

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 声の持ち主は柏の目の前にいる少女であった。  目を疑うような本当に天使に会ったような美しさというより彼女自身が天使だと思ってもいいほど美しい。  雪のような白い肌に腰まで伸びたブロンズの髪は一本一本が金糸のように存在感を表しながら教室の明かりにより、光彩がさらに金色の小川のように美しさを増してゆく。  幼さが残る小さな輪郭には薄い桃色が浮き出る柔らかな頬は可愛らしく、制服に身を包んだ彼女は危ないところが見えてしまいそうな短く花弁のようなスカートにピアノを弾けそうな綺麗な手と細い指。  神に仕える巫女のような清らかな雰囲気を纏っていた。  そして今、彼女は柏との距離が短く、暖かな吐息と女性独特の甘い匂いが柏の嗅覚をくすぐる。  少女は柏の背後に移動して彼の背中をさする。まるで介護するような優しい力加減だ。 「気持ち悪いなら吐いたほうがいいですよ」 「いや、こんなところで吐く以前に吐き気すらねぇから」
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