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彼女の美しさに見とれていたのか柏の心は放心しているような状態になっていた。
そんな小さな会話の中で桜菜氏がにこにこしながら二人の間に入る。同時に柏の意識も我に戻る。
「あらら、入学したて早々遅刻するとは面白い子だね」
「あ、あはは…… 先生?」
「そう、一年間よろしくね。……で、なんで遅れたの?」
首を横に傾き、微笑みながら桜菜氏は柏に尋ねる。その微笑の裏には予想したくない者が潜んでいるのか全身から汗が吹き出るほどの恐怖に満ちたオーラが柏の肌をピリピリするのは気のせいなのか?
「ま……まぁ、人助けで遅れたかな」
「了解」
「え? ばっさりと案外通るんだ……」
「でも惜しいね。今、自己紹介をやっているんだけど天音さんが前に出てなかったら、ちょうどとばそうとしていた君の番だったのに。まぁ、次は君の番にするからその場にいてね」
遅刻してきてそのタイミングが自己紹介の番というそんな奇跡を見られなかったことに少々残念に思いながら桜菜氏は再び元の場所へつく。
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