夢と未来への奏で

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 意を決したのか威勢の良い声は教室中に響き渡り、その反動で天音の赤面はさらに増していき両手で顔を隠して体を小さくしてしまった。  彼女の言ったのは楽器ではなく声(ボーカル)なのだ。それもよほど声に自信がないと言いにくい、中途半端な声だとそれこそ皆の目線が冷たくなる。 「……その声での歌。聴いてみたいな」  率直な感想を柏は天音に言う。  その言葉に反応した天音は柏のほうへ向き、驚いた表情で柏を見つめる。 「……はい!」  緊張から解かれたのか、力を抜いた落ち着いた喋り方で天音は返事をして自らの席へ戻ってゆく。
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