国籍不明な不法侵入者

10/11
380人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
  「お前…、マジ、何者?」 「だから、神様だってば!」 「……、なにがしてぇわけ?」 「だから…、少しの間でいいから、ここに置いて欲しい…」 「…なんで、俺のとこに?」 「……運命?」 「は??」 「きっと、これも、運命だよ」 「…意味、わかんねぇ……」 「物事に偶然なんてねぇよ、すべては必然なんだよ」 ……なにを突然、神様っぽいこと言い出してんだよ どう考えたって、お前はただのイカレた不審者だろ? 「………、」 だけど、突然真剣な眼差しで俺を見つめながら、そんな悟ったようなこと言うもんだから 不思議とドキドキしちゃって、バカみたいにその言葉に呑まれそうになってしまって 喉の奥を詰まらせながら、言葉を発することができず 目を逸らすこともできなかった 「金なら、いくらでも出すから…」 「………、」 「…お願い…、……な?」 「…―っ、」 無言のまま目線を逸らせずにいると、自称神様は更に眉毛をハの字に下げて 子犬が耳を垂らすように、ションボリとしながら懇願されて 上目遣いでそんなこと言われたら…… (…俺が犬派と知ってのことか?) ……断れるわけないじゃんかよ! 「……わかった、」 「…え?マジで!?」 「ただし!嫌んなったらすぐ出てってもらうからな!」 「やった――!!」 「あと、こんなに金はいらねぇから、メシ代だけはもらうけど」 「え…、コレ、一回やったら戻すの大変なんだけど…」 「…じゃあ、どっかにしまっとけよ」 「いらねぇの?金、好きじゃねぇ?」 「…―っ、金なんて、ありすぎてもダメなの!ありがたみがなくなる!」 「ふはっ…、そっか、うん、そうだよな」 「………」 自分でもなんでかよくわからないけれど、このおかしな不法侵入者を自分の部屋に置くことを許してしまって 必死に差し出した金を断ると、自称神様は困った顔をしながらも、フワリと微笑んで その笑顔に、胸の奥がキュンと鳴いた ……気がした  
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!