380人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「…―なっ、て、手品!?」
「ちっげ―よ!ホンモノだし」
「意味わかんねぇ!」
突然の奇行に驚きながらも、舞い落ちる万札を掴み取ってみると
確かに、それは本物っぽくて
手品にしてもすげぇけど、そのためにこんなにたくさんの金を用意してるってのもすごい話で
まるでドラマでも見るように、自分の周りに万札がばらまかれている様を目の当たりにして
言葉を失ったまま、呆然とすることしかできなかった
「…まだ足りねぇの?あんまこの力使うとおこられんだけど…」
「…はあ?」
「しょうがねぇな…、あと、なんか紙っぽいもんは…」
「…いや!もういいから!」
何も言わない俺に対して何を勘違いしたのか、自称神様はまだおかしな奇行を続けようとしたもんだから
慌てて制止の声を投げかけた
「…なに!?お前、マジシャンに弟子入り的ななんか!?」
「はあ?だから、ちげぇって!神様だって言ってんじゃん!」
「はああ!?ふざけんな!」
「ふざけてねぇよ!お前らの描く神様は、なんでもできんだろ?」
「は…?」
「だから、俺に不可能はねぇ」
「………」
なんだろう
確かに、目の前で見せられた光景は、マジックにしてはあまりに壮大で
通常のマジックとは違い、すぐにそのタネをしまい込もうとする気配も見受けられなくて、溢れた万札が消えてなくなるわけでもなくて
正に神業、というか
こんな大金に囲まれて、マジで夢みてぇな出来事に遭遇してるわけなんだけど
神様と名乗る目の前の男が、あまりにアホっぽくて
その言葉にも、なんの威厳も説得力もなくて
(マジ意味わかんねぇ…、だけど…)
目の前にいる自称神様は、散らばった万札には何の関心もないようで
ただ、困ったように眉毛を下げながら俺を伺っているだけで
(…ハァ……)
なんだか、色々考えてる自分がバカらしくなってきた
最初のコメントを投稿しよう!