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「・・・・狼さん」
「ダイラ・・・」
知らず俯いていた顔を上げれば、金の瞳が僕を真っ直ぐに射抜いている。
「知らぬうちに来たのなら、また知らぬうちに帰れるかもしれん・・・。
お前が埋まっていた桜の樹は、この店の中庭にある。
近くに留まっていれば、何かの弾みで家に帰れることもあるだろう。
帰るまでの生活も、俺が面倒みてやるから心配いらん」
静かだけど、きっぱりと、狼さんは言い切った。
あんなに怖かったはずの轟くカミナリは、今は安心する力強い声でしかない。
「わっちも、協力しんす」
力付けるように、お姉さんが微笑み手を握ってくれた。
「わっちは、これでも花魁でありんすから。
旦那様たちにお願いすれば、色々と話が聞けると思いんす。
坊が帰る方法も、きっと・・・」
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