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紺色のダッフルコートを着た、背の高い少年。ルイは、傍目から見ると力仕事をしてきた後とは思えないほど、上品な雰囲気を持っていた。
そして今まではそれを、獲物の心を解して近付く為に利用していた。しかしルイの欲望が露になると、獲物はもうただルイの力の言いなりになって、叫び声をあげるしかなかった。
今までは、そうだった。
だが今のルイは、例え誰かに声を掛けられたとしても相手にせず、ただひたすら白い息を吐き、一人を待ち続けた。
その日は、雪が降っていた。
(ローズ、ローズ、ローズ……)
ルイはひたすら、ローズを待った。
向こうの角から現れてこちらに来るんじゃないか、
それかもっと遠くの坂を下ってくるんじゃないか、
もしくは、自分がよそ見をしている間に後ろを通るんじゃないか。
飽きることなく、毎晩2、3時間ほど、ルイは待ち続けた。
しかしその日は仕事の疲れからか、急に眠気が襲ってきた。
(……俺は何をしているんだろう、助け出したいのに、手掛かりがこんなことしかないなんて……)
ふと、ローズが走ってこちらに来る姿が見えた。
「……あぁ、ローズ!」
ローズは嬉しそうに笑って、ルイに抱き着いてきた。
「ローズ!!……ありがとう、ありがとうローズ。俺も君が好きだよ。愛してる。愛したいんだ、君を」
君……。
「……夢……」
ルイは立った状態で夢を見ていたようだった。そんな経験がなかったルイは、まるで幻覚を見たような感覚に陥った。
(……酷いな、ローズ。いや、ローズは何も……。俺がヒドイのか……)
その時、夢とは違う、スニーカーが地面を擦る音が聞こえた。
「……」
ルイは顔を上げた。そこには、ローズの姿があった。
「ローズ……」
ルイは、ローズを見つめた。
ローズも、無表情のまま、ルイをただじっと見つめた。
「……君に、もう一度会いたかった。毎晩ここに立ってたんだ。君に会いたくて、ずっとここに」
ルイはそう告げながら、顔が熱くなるのを覚えた。
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