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「……触れてもいいか?」
ルイは、しまったと思った。いきなりそんなことを言って、相手は逃げるに決まっている。ローズの前だと、何故うまくやれないのか。
しかしローズは頷いて、目を閉じた。
何てことだ。
俺に任せるとでもいうのか?
ルイは、震える手で、ローズの頬に触れた。
何て白い肌。金の睫毛。薔薇色の頬。そして何も付けていない唇も真っ赤だ。
どこか浮世離れした美しさに、ルイは魅入った。そして思わず抱き寄せ、頬にキスをした。
ローズが、とろんと目を開けた。それほど驚いていないようだ。
「君は、天使そのものだ……。……ここは危険だ、俺の家に来て。すぐ近くだから」
エリザベスは今夜外出して、朝帰ると言っていた。
ローズが頷いたのを確認し、ルイはローズの手を握って歩き出した。
ルイは感じた。今まで一人で見て来たこの通りとは、何もかもが違うことを。
ルイは、今まで夜が怖かった。
だがローズと居ることで、夜が初めてとても良いものに思えた。
「ここだ。入って」
ルイの家は大きい。これが両親が残した唯一の財産だった。
「2階へ。俺の部屋がある」
ローズを部屋へ案内すると、ルイはドアを閉めた。
「いくつか質問がある。君は、女の子?男の子?」
失礼かもしれないと思う余裕もなく、ルイはそう尋ねた。
何故か、あの大柄の男が今すぐこの部屋へ乗り込んで来そうな気がしたからだ。
ローズは答えず、何か促すようにベッドに腰掛けた。
「……この間、君に近付くなと大柄のスーツ姿の男に言われた。彼は誰だ?」
ルイが続けて尋ねると、ローズは気怠そうに答えた。
「ジョゼフ」
ルイは今日初めてローズの声が聞けたことで少し嬉しくなりながら、質問を続けた。
「……君との関係は?」
「オーナー」
「オーナー……?」
「店のオーナー。私の、マスター」
マスター(主人)……。
ルイは、激しい怒りを覚えた。
「そう……俺はね、君のマスターになりたい」
優しくローズをベッドに倒し、唇にキスをした。
それだけでもうルイは、体が熱くなっていた。
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