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エリザベスは、少年というものを心から愛している。愛しているが故に、少年への葛藤が歪んだ形で現れてしまう。
そして、エリザベスが最も愛している少年は、弟のルイだった。
一年前に父親が亡くなり、自分がルイの親代わりになった頃から……ルイがまるで自分の十代の頃のように、葛藤を抱えて毎晩出歩くことを知った。
エリザベスは、悲しんだ。自分達が幸せになどなれないということを、知っていたから。
しかし一方で、ルイが自分から離れて誰かと幸せになることも、許せなかった。
エリザベスは願った。心から、願った。
ルイが、自分を唯一の肉親と慕う、ただ純粋な、力のない子供になれば良いと。
「ベス。本当?」
ルイは真っ青になり尋ねた。
自分は誰かが泣き叫ぶ声に興奮していたが、性器を切り落とすなどという行為は、とてもじゃないが許せなかった。
エリザベスは、微笑んだ。
「ええ。だってその時、私この子が愛しくて、我慢ならなかった」
我慢ならなかった。
ルイが愛しくて。
少年が愛しくて。
少年とは、手に入らない物だ。
少年を愛した時、人は不幸になる。
自分の醜さを知る。
「ベス、俺は……この家を出る」
一瞬、ルイが何を言ったのか、エリザベスには理解出来なかった。
しかし、ゆっくりと考えて、今までのルイの成長を思い出して、今のルイを目に焼き付けてから、やっとのことで微笑んだ。
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